熊野川中生徒も制作に関わる
南紀熊野ジオパーク推進協議会はこのほど、瀞八丁の民話を題材とした絵本「南紀熊野の民話 瀞のぬしさん」を制作。南紀熊野ジオパークセンターの村上健事務長らが26日、新宮市立熊野川中学校を訪れ、制作に関わった3年生6人に完成した絵本を贈呈した。
同協議会では、南紀熊野ジオパークに対する子どもたちの興味・関心や理解を深めるとともに、地域アイデンティティの形成、地域文化の伝承を目的として、2021年度から絵本制作を始めた。題材は、ジオパークの見どころであるジオサイトが舞台となる民話をもとにし、初年度は南エリアの橋杭岩等、次年度は東エリアの那智の滝と浮島の森に関する絵本を制作した。
絵本の特徴は、実際に岩や植物の上に紙を置いて、鉛筆で凹凸をこすり模様を写し取る「フロッタージュ」という技法を用い、本物の大地の質感を表現。また、地域の言葉で記載することで、読み聞かせ時に地域独特の響きやリズムで楽しめるように工夫されている。民話に登場するジオパークの見どころも、写真や図を交えながら分かりやすく解説している。
第3弾となる昨年度は東エリアの瀞八丁が題材で、熊野川中美術科教員の大江みどりさんが絵本の絵を担当していることなどから、エリア内にある同校と連携し、当時の2年生が絵本制作を通じてふるさと学習を実施。6月にジオパークについて学習し、現地でのフィールドワークやフロッタージュなどを重ねて準備を進めた。11月に1人ずつ学習をまとめた作品を制作し、これをもとに校正作業を行って絵本を完成させた。登場する背景の一部に、生徒のフロッタージュが使われている。
絵本は縦24センチ、横21センチで18ページ。教材として活用してもらうため、エリア内の小学校(40校)、保育園・幼稚園(38園)のほか、県内全30市町村の図書館(室)にも配布する。非売品だが、同ジオパークのホームページからデータ化した絵本をダウンロードできる。
贈呈式で村上事務長は「立派な絵本ができました。ありがとうございます。ジオパークの普及活動だけでなく、地域振興にも役立てていきたい」と感謝。一人一人に絵本と図書カードなどを手渡した。
大槻智久さんは「自分たちのフロッタージュが使われていて、きれいで感動した。1年間の学習を通して、改めて瀞峡について詳しく知ることができた」。那々木乃彩さんは「絵本が完成してうれしい。瀞峡がすてきな所だという魅力が伝わってほしい」とそれぞれ感想を話していた。
問い合わせは、南紀熊野ジオパーク推進協議会事務局(南紀熊野ジオパークセンター内、電話0735-67-7100)。