元高校教諭で熊野古道センター長も務めた川端守さんが、亡き妻美智子さんの1周忌に「遺稿集」を出版し、親交のあった人たちに配った。
同級生のおしどり夫婦は66歳のとき、40日間かけてスペインの世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩いた。その旅日記や会誌、記念誌などに掲載された美智子さんの寄稿文、3人娘と孫の感謝の言葉などがつづられている。
夫婦をよく「空気のような存在」と例える。長い時間一緒にいると、お互いに日々当たり前のような存在になり、感謝や意識をしなくなりやすい。そんな夫婦では、奥さんのために本を出そうなんて考えない。
長い結婚生活を支えるのは愛情だけではない。お互い口にしなくても尊敬や信頼の念を抱いている。それが土台にあるから、大きな苦労も乗り越えられる。
川端夫妻は苦難を克服できる価値観を共有できた。美智子さんは千の風になって家族の耳元に立ち寄り、共に過ごした人生に感謝の言葉をささやいていることだろう。
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