会話が得意ではない。例えば質問された時、自分の中で答えを練り上げる。それに時間がかかるのだ。しかし時間をかけて、一応の答えが出る。よしそれをいざ発表しよう、と思った時には、もうすでに会話の流れは違うところに行ってしまって、せっかく考えた私のかわいいかわいい回答は、世に出ないままとなってしまう。
女性の世間話などを聞いていると、すごいなあと思う。非常にテンポよく、まるで何か音楽のセッションでもしているかのような気分さえ覚える。実際、音のやり取りによる表現でエネルギーを交換し合って感情を動かしているのだから、根本は音楽に近いのかもしれない。一通り会話が終わって何を話していたか聞くと、内容はあまり覚えておらず、ただ楽しかった、良い時間を共有できたといった、まさにコンサートの帰りのような、感情の運動の余韻だけが感想で返ってくる。
会話は、哲学よりも音楽なのかもしれない。完璧な答えよりも、素直なあいまいさも含めて相手とセッションすることが本来。まあ、そんなことを考えている時点でまた会話には置いていかれるのだが。
【稜】