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紀南抄「八反田遺跡」

 弥生時代の遺跡を見つめる。確かにそこに人々が生きていた証し。それは文献によって歴史化されるが、この目で見るうえではまだ歴史ではない。出てきた土器や建物の跡が、今の自分は人々が脈々と受け継いできた先にあるのだと、静かに物語っている。
 
 新宮市木ノ川で八反田遺跡の発掘調査が進んでいる。市道比奈久保線交差点改良工事で道路拡幅に向け、文化財保護法に基づいて地下の遺跡を調べる必要があるためだ。18日に現場公開があった。
 
 紀南地方では遺跡の発掘調査自体が珍しいのだという。理由は、都市開発が県北部に比べ進んでいないため。埋蔵文化財を包蔵(ほうぞう)する土地を発掘する場合は原因者に届け出・通知の義務があり、行政は必要に応じて発掘調査の実施などを指示できるが、そもそも発掘がなければ調査の必要も生じない。
 
 墓荒らしは、何年経てば発掘に変わるだろうか。開発が進まず調査されていないのは憂えるべきか。当時ここに住んでいたわたしたちの祖先は、どんな景色の中で、どんな日々を過ごしていたのだろう。歴史になる前の遺跡に、胸が高鳴った。
 
【稜】

      11月27日の記事

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