原発の処理水の海洋放出に向けて調整が続いている。IAEAは「人や環境に与える放射能は無視できるもの」とする包括報告書を出したが、全漁連が4年連続で反対する特別決議を採択している。
処理水の海洋放出の是非はさておくとして、例えば、中国は食品輸入の規制を示唆しており、日本の漁業全体に伝播しかねない。この地域の水産事業者の輸出にも影響を与える。コロナ禍や物価高騰の苦境で奮闘する漁業者の姿を見ている身として、やりきれなさを感じる。
科学的根拠を何よりも重視すべきだが、東日本大震災で受けた打撃の上、風評被害が長期化すれば被災地の漁業の死活問題になりかねない。地場産業は地域の住民の誇りで被災地の復興に致命的な影響が出る可能性もある。
分からないことが人々の不安をかき立て分断させていくことは、コロナ禍のこの3年半で痛感したことである。安直な風評に惑わされず、公正に科学的な根拠を積み重ねていくほかない。冷静に今後の議論を見守りたい。
(R)