少し前の当欄で「稜」記者が、自治体職員に資料提供を断られたことを記した。それを読んで昔を思い出した。現在は各自治体の広報担当からの資料提供が比較的スムーズに行われているが、当方が入社した20数年前、自治体によっては資料がほとんど出ないところもあった。資料提供に頼らず、役場に出向き職員と対話しながらネタを集めた経験は、記者の本質である”足で稼ぐ”ことを身に付けることにつながり、駆け出しのころによい経験ができたと感謝している。
一方で、閲覧のみの資料を取材ノートに書き写す段階で数字を1けた間違えたり、首長日程で一日ずれて表記してしまったり、ミスも犯した。自分の確認不足が一番の要因だが、社内で元原稿を付けて校正するのがリスク回避につながると考え、資料提供を各自治体の幹部職員や場合によっては首長に直談判した。「今まで提供したことがない」という前例主義を覆すには時間はかかったものの、こちらの意図を理解してくれ、徐々に提供してくれるようになった。後輩たちに記者の本質を教えるのも自分の役割だ。
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