映画や演劇に詳しくはないが、一目で心を奪われたシーンがある。『幸せの黄色いハンカチ』で、高倉健が演じた出所した男が6年ぶりのビールを飲む場面。大切そうに両手でコップを包み、一滴たりともこぼさぬように飲み込むシーンは、自分が飲むよりおいしく感じる。これまでの苦労と、生きてきた喜びを噛みしめる、まさに〝救いの一杯〟と言えるだろう。
4年ぶりのコツまみバルは車を運転することになり、残念ながらアルコールを飲むことはかなわなかったが、それでも非常に楽しかった。店を巡りながら見知った顔に声を掛ける、普段気になっていた店に入ってみる、喧騒に耳を傾けながらウーロン茶やノンアルコールカクテルを飲むのは、決して悪くはない。5枚つづりのチケットが1000冊完売したから、〝後バル〟を合わせれば5000杯の救いが尾鷲であったことになる。
家に帰り、なんだかたまらなくなり、冷蔵庫にあった発泡酒を開けた。楽しかった一日を思い出しながら、飲む酒は五臓六腑にしみた。
(R)