愛知にいる時は桜といえばソメイヨシノのみだったが、こちらに来てからはカワヅザクラになじみ深くなった。まるで冬から春に変わる喜びを表すかのように、銚子川沿いに咲き誇る桜並木はすばらしい。カワヅザクラからクマノザクラ、シダレザクラ、そしてソメイヨシノと、風情の違う桜をじっくりと楽しめるのは、山深いこの地域の美点の一つである。
ソメイヨシノが見頃を迎える前に、今年も卒業式は無事に終わった。突然の休校、イベントの中止や縮小、給食の黙食、マスク着用の学校生活など、いろんな制約を受け続けてしまった子どもたちだったが、時期や地域によって対応が分かれたものの、最後の卒業式だけはマスクを外して式を行ったところも少なくなかった。緊張の面持ちだったり、先生や友人の言葉に涙ぐんだりと、子どもたちの充実した顔をレンズ越しに見て、少しほっとしたような感覚を覚えた。
卒業生と新入生の数を見比べることになるこの時期は、深刻な少子化を痛感する季節でもある。コロナはそのうち終息するとして、過疎化という地域を蝕む病はいつか治るのか。いつの時代であれ、子どもたちの笑顔が絶えない地域であってほしい。
(R)