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紀南抄「鬼は外、福は内」

 「鬼は外、福は内」−。3日の節分の日に各地で聞かれたこの文句。一体どういう意味だろうか。

 鬼は「邪気」、福はそのまま「福」、すなわち良いこと。これが人間一人一人の内部の邪気と福のことを指しているのであれば、私はいささか違和感を覚える。邪も福も、どちらもあって一人の人間だ。ならば邪に対して行うべきは拒絶ではなく受容。自分自身の清らかな明るい部分も鬱屈とした暗い部分も、どちらも受け入れることが自分自身を大切にするということではないか。

 一方で、これが社会的な共同体でのことを指しているのなら、納得感がある。日本は元々、個人の意志を貴ぶアメリカなどと比べ、ムラやイエなど共同体全体での生存を重んじる集団的な社会。浅学で節分行事の正確な起源は把握していないが、日本の集団社会の中でその共同体の存続を脅かすような、人為的な、あるいは自然災害的な不穏分子が生じることのないよう払おうとしたのかもしれない。

 良いことばかりが起こればいいなと思うが、何が良いことで何が良くないことかを決めているのは自分。鬼も福も一緒に家の中で生きていてはいけないだろうか。

【稜】

      2月 6日の記事

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