東紀州地域医療構想調整会議を記者席から見ていて、この手の会議らしからぬ緊張感があった。出席していた医師による率直な意見が風穴を開けた形で、用意された資料を朗読する県職員と、日々現実にある問題と直面している医療従事者が、同じ方向を向いているようには見えなかった。
「どこで地域の医療について考えるべきか。会議の在り方自体ももっと考えるべき」「病床削減を在宅医療でカバーしようという計画だが、担い手の確保に不安しかない」「県は国の説明を繰り返すだけでなく、主体的に動くべき」などとかなり踏み込んだ発言もあったが、このような現実に即した議論はもっとされて然るべきだろう。
住み慣れたまちで適切な医療や介護を受けられる地域医療構想や地域包括ケアは重要で、病院のみでの治療から在宅医療を重視する転換は必要だろう。有効な施策や体制づくりではあるものの、現状の問題を覆い隠す目くらましに使われている印象が拭えない。
人材不足は日本全体の問題だが、過疎化と高齢化が進む地域において、安心安全な生活な要である医療と介護は特に厳しい。官民問わず主体的な取り組みが必要不可欠となる。
(R)