祈りの道のサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩いた方の話を聞く機会があった。主催したのは大台町のNPO法人で、熊野古道と同じく道として登録された世界遺産として多くの人が訪れているサンティアゴの巡礼路から共通点を見出そうという狙いはよく理解できる。
体験談を聞いていると、荘厳な建物や雄大な風景よりも、巡礼者や地元住民との交流の方が思い出に残っているように感じた。国をわたる巡礼路の地図を見ればなんと壮大な苦行か、とも思うが「アルベルゲ(巡礼宿)の夜はまるで修学旅行」と言われると楽しそう。
熊野古道も世界遺産で、伊勢路は「伊勢神宮と熊野三山をつなぐ」という歌い文句は魅力的ではあるものの、過酷な峠道をたどる旅はどうしても客層が限られる。
古文書をひも解けば、尾鷲のまちは熊野古道の厳しい道中の楽園であり、かつての憩いと交流の場であったことは想像に難くない。サンティアゴの巡礼路にあるバルやカフェ、アルベルゲのような、熊野古道の交流を疑似体験できるような場を、期間限定でも設けることはできないか。単発の企画でも「世界遺産のまち」のPRとして有用ではないか。
(R)