知床半島沖で観光船が沈没した事故では、地域の観光船や漁船も行方不明の乗員乗客の捜索にあたっていた。安全対策の不備や事故につながる経営方針などに注目が集まっているが、彼らの行動がいかに尊いものであるかを知ってもらいたい。
海での遭難は海上保安庁だけでなく、連絡を受けた漁業者がボランティアとして救助に向かうことがある。活動中は漁を放棄することになり、二次災害のリスクもあるが、実際に救助して表彰を受ける漁業者を取材すると「助けられてよかった」「命がかかっているのだから構うことはない」と、気にする素振りが一切なかったことが印象的。
救助や捜索に参加した場合、公益財団法人日本水難救済会から一定の報奨金が支払われるが、この報奨金は寄付でまかなわれており、休業の補償どころか燃料代にもならない。それにもかかわらず「一刻も早く見つけてあげたい」と協力を惜しまない姿は知床も尾鷲も同じだ。
今回の事故を受け、国土交通省は小型旅客船の安全対策を全面的に見直す方針を示している。それはもちろん重要ではあるが、水難救助にあたるボランティアの支援についても議論が深まってほしい。
(R)