まだ尾鷲になじめていなかったころ、仕事終わりや休日は夢古道の湯に行くことが多かった。湯上りで向井の坂の上から望む尾鷲湾の景色に、何度となく心が癒されてきた。尾鷲の地物を活用した取り組みにも意欲的で取材する機会も多く、担当者の「尾鷲を盛り上げたい」という趣旨の言葉によくうなずいたものだ。遠方から来てくれた友人に「とりあえず風呂かランチバイキング」でもてなす場としても重宝しており、個人的に尾鷲の中でもいろんな思い出のある場所となっている。
夢古道の湯を運営している熊野古道おわせで不適切な経理が発覚したため、指定管理の継続が取り消され、2か月ほど休業する見通しとなった。一企業の内情は知る由もないが、管理体制に問題があり、今回の事態を招いたのではないか。取材で聞いてきた言葉が真実であるのなら、どうしてこんなことになっているのか、という思いが消えない。
観光施設が決して多いとはいえない尾鷲の中で、夢古道の湯は必要不可欠な存在であり、ランチバイキングも関係者の努力で浸透してきた企画といえる。当事者は厳しい状況にあるとは思うが、立て直しに努めてほしい。
(R)