「専門性」ということについて、しばしば考える。
JAみくまのが運営する農場で、農業の研修を受けている人に話を聞いた。ゼロから農業を始めて一番苦労した点を尋ねると「わかっていなければならないことが思っていた100倍ある」と語った。
農業はなんとなくのんびりしているイメージがあるが、実際は違う。肥料の配合には化学式や算数の知識が必要であり、機械が壊れたら自分でメンテナンスをし、天候や土についても精通していなければならない。多様な知識・経験の集積をもって作物と向き合い、それでも思うとおりにいかないというのだ。
農業に限らずどんな事柄でも、事を成そうと思った時には幅広い能力が求められると思う。分業社会にあって、つい私も「これは専門外だから」と心を閉ざしてしまいそうになるが、それでは何か問題が発生した時に自分だけでは何も判断できなくなってしまう。
日本では、いろんなことに首をつっこむ人は「ミーハー」という言葉で揶揄(やゆ)される。しかしレオナルド・ダ・ヴィンチのようになんでもできる人を目指してもいいと思う。浅く広く興味を持つのは学びの根本ではないか。
【稜】