「君たちは大変な時代を生きていかなければいけない」と、未成年の時に大人に言われた。そのときは状況をよくわかっていなかったのでなんとなく聞き流していたが、今はそれに反論できる。「人が大変じゃなかった時代なんてなかったではないか」と。
近大新宮高校で22日、令和3年度の卒業証書授与式があった。生徒らは毅然(きぜん)とした態度で式に臨み、それぞれの道へ踏み出していった。
今年は新型コロナ対策のため保護者の入場をなしにし、来賓も人数を二人に絞った。例年ならもっと多くの人が出席し、華々しく送り出されるのだろう。この学年の子たちの高校生活は最後までコロナとともにあったのだと考えると、胸にこたえるものがある。
しかし、卒業生たちは前を向いていた。一糸乱れぬ精悍な姿勢で、学校生活を最後まで全うしたのだ。私が「大変な高校生活だっただろう」と思うことは、私が子どもの時に言われたあの言葉くらいエゴイズムに満ちたものなのだと、生徒たちの堂々たる態度に思わされた。
みんな、与えられた環境の中で生きていかなければならない。それを教えてくれたみなさんの、卒業を祝う。
【稜】