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紀南抄「食と共同体」

 岩手県一関市から届いたリンゴが、新宮市の給食になった。両市が7月に結んだ友好都市提携の記念事業で、新宮市からは県産ミカンを送った。
 
 「同じ釜の飯」という言い回しがあるが、食には不思議な力があると思う。それまで赤の他人だった人たちが「食事をともにする」というある種の儀式を経て一つのコミュニティーを形成したり、外から来た客人がその社会の食べ物を口にすることで受け入れられたりするというようなことがある。
 
 沖縄の人と婚約して相手の親にあいさつに行く時の関門の一つも、食であるという。家庭にもよるが、その家で出てくるくせの強い「ヒージャー汁(ヤギ汁)」を眉一つ動かさずに飲めるかどうかが、家族の一員となれるかどうかの分かれ道なのである。ちなみに私は友人のオバー(祖母)のヒージャー汁をおいしくいただいた。
 
 この「食と共同体」の文脈からすると、特産品を交換し給食にする取り組みは、互いを受け入れる手続きとして有効だと思う。遠く離れた土地同士だからこそできる助け合いというものもあろう。交流の第一歩として食を共有することが、今後の共助関係につながっていけばよいと思う。 
 
【稜】

      12月 9日の記事

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