2020年の国勢調査の速報によると、日本の人口は2期連続で減少し、1億2622万7000人となった。都道府県別に見ると、東京、埼玉、千葉、神奈川、沖縄、愛知、福岡、滋賀、大阪の9都府県の人口が増加し、38道府県で減少している。地方の人口減少が止まらない。
中国の唐代の詩人、杜甫が長年の苦労を経て官職を得て家族の元を訪ねた際の心境を詠んだ詩がある。その中で「朱門酒肉臭し 路に凍死の骨有り」という貧富の格差の憤りを感じられる文がある。
今から1300年ほど前の詩ではあるが、現代と重ねて見えてしまうことがある。人が集まる都会が栄える富貴の家の中なら、凍えて飢える門の外は地方。詩の後半に家族と再会した杜甫が幼い我が子が飢え死にしたことを知る場面があるが、杜甫が抱えて慟哭したであろう我が子は、衰退していく過疎地の未来だろうか。
杜甫で有名なのが「国破れて山河あり」で始まる『春望』。自然の雄大さを感じられる文だが、詩自体は戦乱に巻き込まれ、家族に会えないことへの不安や焦り、自分の無力さを詠んだもの。自然豊かな本紙地域が抱えている将来の不安と重なるものがある。
(R)