コロナ禍で帰郷できず、墓参りがご無沙汰になっている。散歩がてら、先祖にあいさつに行く、という感じで、あまり宗教的な感覚はないが、墓前で手を合わせると、故郷に帰ってきたと感じる。
紀北町議会の一般質問で、合葬式墓地建設の検討を求める要望があり、「アンケートを実施して町民の声を聞いては」との提案もあった。
過疎化が進む地方では、所有者の高齢化、跡継ぎの都市部への流出などから、管理の難しい墓が発生しやすい。もちろん単純な人口の増減だけでなく、時代の変遷による宗教観や家族観の変化も大きく関わっており、今後は全国的に合葬式墓地が増えていく可能性は十分にある。
先祖や先人をしのぶ行事は地域の伝統文化と密接に関わっている場合が多い。執行部の「政教分離の原則から、公営の合葬式墓地では守ってきた宗教上の慣習が絶たれる場合がある」と答弁したが、住民が安心して暮らせる地域づくり、その地に根差した伝統文化を支えていくことも自治体、特に市町村の役割のはず。先祖をしのぶことは地域を愛する心にもつながる。町民の声を聞きながら、じっくりと腰を据えて取り組む問題ではないか。
(R)