たまに「聞く力」についての本がよく売れる。自分も考えることがあるが、最近、それに頼ろうとしていること自体本筋を見失っているような気がしてきた。
そもそも人が人の話を聞くのは、純粋に知りたいと思うからだろう。その前提を忘れて「聞く力」だとか「話を引き出すコツ」だとか考えても、小手先の技術におぼれて大切な事柄までたどり着けない。ここでいう大切な事柄とは、「自分が本当は興味があること」だ。
子どもは誰から学ぶでもなくさまざまなことに疑問を持って、親を困らせる。ということは、人間には生来的に知的好奇心が備わっているはずだ。ならば一見興味のない事柄でも、自分の興味を引き起こすことさえできれば、自然とよく聞き理解できるはずだ。本当に聞きたいことというのは、実は相手の中ではなく自分の中にある。
好奇心には、「興味のフック」がついている。そのフックを引っ掛ける先が分かれば、自然とたぐり寄せることができる。逆に、フックが引っかからなければ、どんな話も深まらない。コツや技術を考える前に、純粋な自分の好奇心に立ち返ることで、聞き手としても人としても豊かになる。
【稜】