津波に対する重要な教訓に「津波てんでんこ」がある。何度も甚大な津波被害に遭ってきた三陸地方に伝わる「てんでんこ」には、「各自」「めいめい」の意味があり、「大地震がきたら、一刻も早くめいめいが高台へ逃げろ」。
家族や知人を助けに行ったことで避難が遅れ、多くの犠牲者が出た事実があり、大地震が起きたら取るものもとらず、各自てんでんばらばらに高台に逃げることで、結果として全員が助かるというという意味が含まれている。
ある防災シンポジウムで、講師の大学教授は「とても重要な教訓だが、津波てんでんこは冷たい世界。技術がないときはてんでんこしかなかったが、今のようにいろんな方法とかやり方が見つかってくれば、みんなで避難なんだと思っている」と語ったが、手放しでは賛同はしにくい。
想定南海トラフ地震では、避難行動が取れなくなる一つの目安とされている「浸水深30センチ」が揺れ始めてから早いところで10分程度。地震の揺れがどれだけ続くかわからないが、揺れ始めてから5分以内に逃げれば、助かるとのシミュレーションもある。災害弱者への対応は当然必要だが、基本は「てんでんこ」だろう。
(J)