新宮市が今秋オープンに向け建設工事を進めている丹鶴ホール(文化複合施設)のシンボルマークとロゴデザインが決まり、先日発表された。愛称に関しては一般公募したが、デザインは事業者に発注。開館までのPRにも活用するとして、この時期の発表となった。愛称公募では全国から1010件の応募があっただけに、デザインも公募することで施設完成へ機運を高めることができたのではないか。市民のための施設であるなら、さまざまな場面で市民の声を大事にすべきでは。
情報発信は住民に対するサービスの基本となるものだが、このところの新宮市政を見ると、住民不在で事を進めていることが散見される。
新型コロナウイルス感染症に関する個人情報を外部に流出させたとして、市は27日に職員2人の懲戒処分(戒告)を発表した。不適切な事務や不十分な情報処理によって流出させたことが、職務上の義務違反と職務怠慢にあたるとの処分理由だが、経緯や対象者の人数については、「個人の特定につながる」として明らかにしなかった。
個人情報が流出した対象者の人権を守ることは当然必要なことだが、併せて市民の知る権利や人権の保障にも努めなければならない。和歌山市では先日、新型コロナの感染者414人分の個人情報を誤った電子メールアドレスに送信するというミスがあり、経緯などについては記者会見で説明した。今回の件で新宮市は当初、文書による発表のみだったが、報道機関からの問い合わせが相次ぎ、急きょ会見を設定。各報道機関は和歌山市などの事例も挙げて具体的な情報や説明を求めたが、応じなかった。
その一方で、市長は「職員一丸となり再発防止に努め、市民の信頼回復に努める」と述べたが、市民への説明責任が果たせていない状況下で、何をどのようにして再発を防止するのか不透明だ。不十分な情報では市民の不安をあおりかねず、今後ワクチン接種準備の拠点となる保健センターへの不信にもつながりかねない。今回の事態を重く受け止めているのだろうか。ほかの市町村は今回の新宮市のような対応にならないよう、住民を第一に考えた情報発信に努めてもらいたい。