新型コロナウイルス感染拡大で大きな打撃を受けた町内宿泊施設の利用促進と、町民にあらためて地域の魅力を認識・発見してもらうことを目的とした、那智勝浦町の経済支援策「町民限定プレミアム宿泊・お食事券」。賛同する町内の宿泊施設で利用できる券(8000円分)を3000円で販売するもので、1週間で予定数を完売した。
近隣の尾鷲市や紀北町で感染者の確認が相次いでいるが、新宮保健所管内での発生はゼロ。まずは地域内で経済を回すことにつながる今回の取り組みは評価できる。担当する町観光企画課は、予想を大きく上回る早さでの完売に驚きながらも、今後は実際の利用促進のための活動を積極的に行っていくとしている。
兵庫県姫路市では、コロナ禍で苦境の飲食店を応援するため、先払いチケットの購入を受け付ける事業を官民一体で実施。飲食店のチケットを市民が購入すれば4割分が上乗せされ、店舗側には上乗せ分を含めた代金が前払いされる仕組みだが、複数の店舗関係者が自店のチケットを購入するケースが見られ、市は「本来の趣旨と異なる」として対応に乗り出したことが報じられていた。
姫路の事例を踏まえると、今回の那智勝浦町のチケット購入に関して、「指定宿泊施設の関係者による買い占めはなかったか」ということは懸念される。関係者が購入して、使用せずに換金すればペアの場合で最大1万円分が"儲け"になるからだ。
那智勝浦町としては、今回のプレミアム券が早期に完売したことは誇れることだが、この事業に1700万円の予算を計上しており、町民への利用促進と同時に、その拠出(換金)に際して、チケットの使用状況を宿泊施設に確認していく必要がある。宿泊施設の売り上げが少しでも回復し、同時に地元の魅力を再発見した町民が各地に住む知人らに宣伝、集客につながれば今回の事業は有意義なものだったと言える。
本紙エリアの各自治体は、新型コロナのさまざまな支援策を実施しているが、調査・分析をしっかりと行い、次へつなげていくことが責務と強く認識してほしい。それをすることで、われわれの税金が無駄なく有効に使われることになる。