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紀南抄「花のあれこれ」

 花の取材をすることが多くなった。そのため、道路脇にひっそりと咲く花にも敏感になってきた。調べるごとに興味が湧き、面白さを増す。
 
 洋の東西を問わず、「ラン」は高貴な花として古くから珍重されてきたが、一口にランといっても、約2万種の原種と6万種もの人口交配種が存在する。ランは英語で「オーキッド」という。この言葉の語源はギリシャ語の「オルキス」で、その意味はなんと「睾丸」だ。ある種のランは二つの球根を持ち、うち一つから芽を伸ばしてやがて花を咲かせるが、この球根の形が人間の睾丸にそっくりだったことから、このような名称がつけられたそうだ。
 
 オランダ商館医シーボルトは、日本滞在中に、数多くの植物を採取・調査し、分類を行った。その活動の中で、シーボルトはあるアジサイに「オタクサ」という名をつけた。じつは彼の愛人だった長崎丸山の遊女「お滝さん」にちなんでいる。シーボルトは、お滝さんとの間に娘イネをもうけたが、国外追放となってしまう。彼は大好きなアジサイにその愛する人の名前をつけ、ヨーロッパに紹介したのである。  
 
     【茂】

      7月14日の記事

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