市野々小で独自学習
紀伊半島大水害から15年を迎えるのを前に、土砂災害に関する研究成果などを発表するシンポジウムが23日、那智勝浦町天満の町体育文化会館で開かれた。甚大な被害を受けた町立市野々小学校の児童、教職員が登壇し、約300人を前に教訓を伝えた。
2011(平成23)年、台風12号による大雨で、和歌山県南部を中心に土石流や深層崩壊など多数の被害が発生。県全体で死者・行方不明者61人、建物全壊240棟を数えた。同町の那智川流域では同年9月4日未明、4時間で341ミリの雨量を観測し、近隣の市野々小では1階部分に大量の石や木が流れ込んだ。
シンポでは、同校の5、6年生6人が登壇。稲垣陽大さん(5年)が堂々と司会を務めた。水害後に生まれた世代だが、町独自のカリキュラム「災害学習」を受けており、当時の詳細な被害状況について学んだ。西村那瑠さん(6年)は「私たちは水害を経験していない。だからこそ学ばなければいけない。そして伝えていきたいと思っている」と壇上で語った。
木村享照校長(54)は、学習に加え、自身のつらい被災経験を話している。シンポの場でもエピソードを共有した。当時、那智中学校に英語教員として赴任しており、受け持っていた3年生の生徒を亡くした。「毎日、握手して『またね』と伝え合っていた子と永遠に会えなくなった。学校が再開してもクラスは落ち着かず、雨が降っただけでおびえていた」。一方で、先日、同窓会に招かれ、ともにスポーツを楽しんだという。教え子たちは30歳になっていた。「彼らは乗り越えた。本当に強い」と年齢、立場を超えた尊敬の念を口にした。
大谷英吉さん(5年)、田実諒賀さん(5年)は「夏休み中に何度も集まって発表の練習をした。自分たちが語り継いでいく。緊張するけど、大勢の前に立って伝える」。木村校長の「社会から水害を忘れさせない」との思いを受け継ぐ姿勢を示した。
水害後に開設された県土砂災害啓発センターが学習に協力した。パネルディスカッションでは、担当者が上流と下流を再現した川の模型などを使い、土砂災害の発生メカニズムを教えていると紹介した。
このほか、水害の啓発をテーマにしたポスターコンクール入賞作品の展示、巽好幸・神戸大学名誉教授による紀伊半島の古代史に関する基調講演などがあった。シンポは国土交通省近畿地方整備局、和歌山県、那智勝浦町の3者が共催した。
