紀北町や度会町など6町はこのほど、環境省による第5回「脱炭素先行地域」に選ばれた。県内初の選定で、合同で新電力会社を設立し、電気自動車による広域周遊観光など、脱炭素と地域活性化を目指していく。
選定されたのは紀北町のほか、度会町、多気町、明和町、大台町、大紀町と民間企業による「6町の地域連携で人材や資金を呼び込む! 中山間地域一体の脱炭素・資源循環プロジェクト」。計画期間は2024年度から29年度までの6年間で、総事業費は約50億円。
提案内容の資料によると新電力会社は「度会町中心エリア」での木質バイオマス発電、「多気町VISON周辺エリア」でVISONや給食の食品残渣(ざんさ)による廃棄物発電を導入し、太陽光発電とともにエネルギーの地産地消のシステムを構築する。このほか、日光を遮って育成するかぶせ茶の特徴を生かした茶畑のソーラーシェアリングも導入する。
発電以外にも
- 地域住民の脱炭素活動へのデジタル地域通貨による還元
- 木質バイオマス発電による発生熱を栽培ハウスや福祉施設に活用
- バイオ炭を肥料にして活用▽電気自動車による脱炭素ツーリズムの振興と周遊観光の促進
—を盛り込む。
脱炭素先行地域とは、カーボンニュートラルに向けて、二酸化炭素排出ゼロや温室効果ガス削減を地域特性に応じて実現する地域で、9月27日に発表された第5回を含めて、全国で38都道府県108市町村の82提案が選定されている。
今回の選定理由について評価委員会は「デジタル田園都市国家構想交付金などで連携を推進している6町で地域新電力を設立するという点や、小規模な自治体が連携して地域課題を解決しつつ脱炭素を同時に実現するという点が高く評価された」「未利用材や食品残渣などを活用した発電事業を通じて、地域資源を広域的に活用する仕組みを構築し、サプライチェーンの整備や雇用創出、森林管理、林業振興、資源活用といった持続可能な地域経済の発展に向けた取り組みも評価された」と特徴を紹介している。
今月4日に度会町で開かれた記者会見で、尾上壽一紀北町長は「地球温暖化対策は世界共通の重要な課題であり、温暖化によって台風の巨大化や集中豪雨などで、世界各地で甚大な被害が頻発している。2050年までのカーボンニュートラルを目指すため、6町共同でゼロカーボンシティを宣言し、取り組みを進めており、今後もさまざまな課題があるが、このプロジェクト実現に向けて力を合わせていきたい」とあいさつした。