三重大学の高大連携東紀州講座の最終回が7月29日、尾鷲高校であり、同大付属病院の医師が肺がんの基礎知識と最先端治療を紹介した。医師としてのやりがいについても語り、受講した高校生たちに将来を考えるきっかけを与えた。
講師は助教で呼吸器外科の川口瑛久さん(34)。尾鷲、木本、熊野青藍の3校の生徒13人が受講した。
川口さんは肺の働きと構造をはじめ、正常組織を破壊して広がる浸潤、血流などから他の臓器に広がる転移といったがんの性質を解説したほか、肺がんのレントゲン写真を2枚示し、異常箇所を見つける読影体験を生徒にさせた。CT画像を参考にしても素人には白っぽいもやが分かりにくく、生徒はがんを見極める医師の「確かな目」の重要性を実感した。
手術の歴史では、全摘から肺をできるだけ残す方向へ進化し、開胸手術は胸腔鏡、さらに単孔式手術へと負担軽減が進んだと説明した。近年は医師の動きと連動するロボット手術が普及し、三重大は2年前に単孔式支援ロボット「ダビンチSP」で神経が密集した胸(肋間)を切らない日本初の肺がん手術に成功。今年6月には、同ロボットを用いて生後6か月の女児の腫瘍摘出に世界初の成果を挙げた、と発表した。
三重大では肺の手術の8割をロボットで行っており、川口さんは「今後も発展していくだろうし、もっと腕を磨いて医療に貢献していきたい」と述べた。
後半の講義は川口さん自身の高校時代からを振り返り、医師を志したきっかけや職業観を語った。
高校2年のときに、神経細胞のニューロンの研究をテーマとした冬季スクールに参加したのが医学への道を開いたという。高校生のうちに興味あることに一歩踏み出す重要性を説き、生徒に「迷うなら挑戦を」と呼び掛けた。
医師の仕事は臨床が中心だが、私的時間を研究や論文執筆に充て、世界学会での発表を目標にしていると説明した。
勉強とは何かも熱く語り、「人に胸を張れる小さな挑戦」と定義した。「いい点数を取れると胸を張れる。ちょっと頑張ったら結果が出る。自分にとって勉強とは何かを自問自答してみてください」と問いかけ、医師として働く現在の自分と重ねて「学ぶって楽しい。挑戦っていくつになっても楽しい。一生勉強してもいいと思える職業に出会えた。皆さんも勉強をおろそかにせず頑張ってください」のエールを送った。
