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社説「"危機"を出発点に捉えて」

 国勢調査の結果、新宮市の人口が2万5000人を下回った。少子高齢化と若年層の流出が続く中で、この数字は予想されたものだったとはいえ、地域の持続可能性に対する危機感を改めて突きつけられた。人口減少は、医療・交通・教育などの公共サービスの維持を難しくし、地域経済の縮小を加速させる。しかし、悲観だけでは未来は開けない。今こそ、地域の魅力を見つめ直し、人口規模に見合ったまちのあり方を考える出発点と捉えたい。

 まずは「選択と集中」に基づく政策転換。公共施設の再編では、老朽化した施設を統廃合し、複合化・多機能化を進めることで維持費を削減しつつ利便性を高める。地域交通では、デマンド型交通やAI活用により、高齢者の移動手段を確保しながら運行コストを抑える。医療・介護の連携強化では、在宅医療や地域包括ケアの拡充により、人口減少下でも安心して暮らせる体制を整える。これらは"縮む"ための施策ではなく、まちを"最適化"するための前向きな投資と言える。
 
 新宮市には豊かな自然、誇れる歴史文化、世界遺産を含めた観光資源、そして地域コミュニティの結束力という、都市部にはなく、人口規模では測れない価値があり、これらは未来をつくる"資源"。このような資源を生かし、移住・定住を促す「攻めの政策」も不可欠ではないか。住宅支援、テレワーク拠点の整備、子育て世帯への支援を組み合わせることで都市部からの移住を後押しする。観光では、熊野の自然や文化を深く体験できる仕組みを整えることで通過型から滞在型への転換を目指す。企業誘致と起業支援では、小規模でも高付加価値の産業を育て、地域に新たな雇用を生み出すことにもチャレンジしてほしい。
 
 人口減少は全国的な流れで、地方都市が避けて通れない課題だが、全国の小規模自治体の中には、創意工夫によって活力を取り戻した例も少なくない。岡山県西粟倉村は林業に力を入れたことで移住者が増え、千葉県いすみ市は学校給食を基盤に有機米の産地づくりに取り組んだ結果、転入者が増えた。両自治体に共通しているのは、一次産業に着目したこと。また、徳島県美馬市は移住促進拠点を整備し、集中的に移住者を受け入れ、その後地域の空き家等に転居してもらうという独自のモデルを採用し、注目を集めた。
 
 子どものころから郷土愛を育む教育も大切。一度は都市部に出てもUターンしてくれる、できなくてもふるさと納税で応援してくれるといった流れをつくることも行政の務めではないか。間もなく市議会6月定例会が始まる。市の将来を見据えた建設的な議論が繰り広げられることに期待したい。
 

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