将来の発生が予想される巨大地震への備えとして、那智勝浦町が整備を進めていた築地地区(勝浦漁港付近)の津波避難タワーがこのほど完成し26日、竣工(しゅんこう)式が行われた。堀順一郎町長ら関係者約40人が出席し、テープカットで完成を祝った。
町内7基目となる津波避難タワーは、勝浦にぎわい市場前の町有地に建設。同地区の南海トラフ巨大地震の津波浸水深は4.4メートルの想定で、2階(海抜8.4メートル)以上が避難スペースとなっている。最上階の4階の地盤高は14.85メートル。
1階から2階にかけては、らせん上のスロープと建物の中心付近に階段を設置し、2階以上は階段を利用して上がる。収容人数は400人で、同地区は町の主要な観光拠点地域でもあることから、周辺住民に加えて飲食店従事者や観光客らも含めた避難者数を見込んだ規模とした。
景観や文化に調和した外観で、平時から展望台として開放し、柱を利用して足湯も設置。防災の拠点としてはもとより、観光客を含めた大勢に利用してもらえるような特色のある施設となっている。総事業費は約4億8000万円。
堀町長は式辞で、関係者らの尽力に感謝の意を示し、「このタワーの完成で、町内の避難困難地域がほぼなくなり、地区住民と観光客らの安全性が高まった。ヨーロッパなど津波がほとんどない地域の人に対しても、防災の啓発につながると思う。多くの人に親しんでいただける施設にしていきたい」と述べた。
来賓からは県東牟婁振興局の今井善人局長が県知事の祝辞を代読。「住民の皆さまのかけがえのない命を守る施設として、安心・安全の確保に大きく寄与することを期待している。津波による災害から多くの方が救われるよう、今後も防災対策に取り組んでいきたい」と伝えた。
式典終了後に完成見学会が行われ、訪れた近隣住民らが最上階まで上って、実際に避難にかかる時間を確認したり、勝浦湾の眺めなどを楽しんでいた。住民の一人は「立派なタワーが完成して安心できてうれしい。避難所の勝浦小学校までは遠くて避難を諦めていた人もいたが、タワーができて逃げる気力が湧いてきたと聞いた」と喜んでいた。
