任期満了に伴う新宮市長選(10月19日〈日〉告示、同26日〈日〉投開票)が迫る中、当初は続投へ意欲を見せていた現職の田岡実千年氏が6月、体調不安を理由に立候補しないことを表明して以降、誰が名乗りを上げるのか注目されたが、8月になって、水面下で名前が聞こえていた2人が正式に立候補を表明した。9月1日には市選管による立候補予定者説明会が開催される。ほかに動きがなければ、この2人の争いになりそうだ。
4期16年続いた田岡市政。この間、紀伊半島大水害やコロナ禍という「災害」に見舞われるなど、市政運営の難しさもあった。市庁舎の新築、文化複合施設(丹鶴ホール)の建設といったハード事業を完了させた一方、沿岸部の各市町で進んだ津波避難タワーの建設については、新宮市で進んでいない。市民の評価は分かれるところだが、田岡氏の引退により、新たに誕生する市長への大いなる期待感を抱く市民は多いだろう。市民にとって最も身近な選挙の市長選。新人同士の争いは、現職の田岡氏が初当選した2009年に新人4人が戦って以来となる。
課題は山積している。人口は合併後の2006年3月時点で3万3915人だったが、毎年450人程度減少が続いており、今年4月末現在で2万5526人。出生数も昨年度は94人と初めて100人を割ったが、これを危機的な状況と捉えて対応していく必要があるのではないか。人口減少は新宮市に限っての課題ではないが、何の手立ても打たなければ、まちは衰退し活気がなくなる。
立候補予定の2人はそれぞれ記者会見で公約を発表した。新人候補らしく、新しく思い切った政策を打ち出している。選挙に当選するための、いわゆるリップサービスだけではだめで、一つ一つの政策を実現するための財源の裏付けが必要になる。市の財政状況を調べ、どの程度の予算が捻出できるのか、また、新たな財源を生み出すための知恵と工夫も大切だ。
市長選の告示まで2か月を切り、構図がある程度定まると、市民の関心も徐々に高まっていく。選挙戦になれば街頭だけでなく、最近多いSNSを駆使しての争いが繰り広げられるだろう。地縁・血縁に頼るのではく、政策論争で盛り上がる選挙を期待したい。
