海岸で、石と流木を拾った。
海から流れ着いた石は水中を転がるうちに角が取れたと見えて、どれもコロコロと丸まっていた。白、灰色、赤のグラデーション模様、銀河のような深い色…。それらを部屋で水につけてみると、一気に表情が変わる。なんだか喜んでいるような気がした。
流木は、木と海の作り出す芸術である。木はまっすぐには成長しない。美しい曲線を描きながら育っていく。それも、人の一生では追い付かないような大きなサイクルで、命をつないでいく。そんな生前の躍動を形に残しつつ、波に揺られるうちにおぼろげな化石のような風合いとなる。それらを手に取る時、同じ形が一つとしてないこと、またその手触りがすべすべと優しいことに、安堵する。
そんなわけで、今、我が家のテレビ前のスペースは石ころと流木で混み合っている。海岸に落ちているものはどれも美しいものばかりで、しかもその中から自分のお気に入りを選んできたのだから、それが気に入らないはずはない。「空青し山青し海青し」の熊野は、やはり美しいところだ。それにしても、テレビが見づらい。
【稜】
