パソコンの普及でなくなっていた筆記体の授業が米国で見直されている。筆記体で書かれた公式文書を子どもたちが読めなくなり、全米共通の学習基準で重視していた数学の成績も低下した。「筆記体は脳を活性化させる」という研究結果を受けた方針転換だ。
問題を解いて言葉にしたり文章にしたりするのは数学や英語も同じだが、その考える力の基礎は小学校の国語で育まれる。だが日本も「1人1台端末」の時代になり、ノートをとる機会が減る。ペンや筆を持たないから「読めても書けない」漢字がどんどん増える。
起業家イーロン・マスク氏の会社が、人の脳にマイクロチップを埋め込んだ。思考するだけでパソコンを動かせるようになるという。書く作業すらなくしてしまうのだ。
筆記は情報を取捨選択し、何をどう書き留めるか考えなくてはならない。「脳とコンピュータ直結」ではなく、触覚を使う書く作業に意味がある。教育のデジタル化が進んでも、教育の基本は「読み書き」である。おろそかにできない。
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