電線の上に、スズメが列をなしてとまっていた。なかなかの数だなあと思いその下を過ぎようとしたところ、道から「ぺちゃっ」「ぺちゃ」という不穏な音が聞こえることに気付いた。
「フンか」と、一気に身構える。私は小学生かもっと幼かった頃、動物園で楽しくアザラシを見ていた際にカラスにフンをかけられた経験がある。キリンに唾をかけられた人を見て少し愉快な気持ちになっていた後だっただけに、天罰でも下ったかと思ったものだ。道を歩いていて真横にフンが落ちてきたこともある。とにかく警戒して歩かねばならない。
しかしよく見ると、路上にはフンらしきものは落ちていない。代わりに、紫色のシミがコンクリートにいくつもできていた。どうやら、そろって木の実を頬張っていたようだ。あふれたものが下に落ちて、今やかわいく聞こえる「ぺちゃ」という音を出しているのであった。
下が土だったなら種から発芽しただろうな、などと地球の循環に思いをはせつつ、無事の通過に胸をなでおろした。これが最近のトップニュースなのだから、人間一人のいかにちっぽけたることか。
【稜】