この地方の魅力は「土地柄」である。
日本は東京の一極集中による中央集権的な国作りによって、みんな「東京的なもの」を追い求める風習がある。その証左の一つは、地方都市がいずれも、大きな駅を中心にビル群が立ち並び、郊外では住宅街と大型ショッピングモールがあるといったような「小さな東京」化しているということだ。どこも東京的な街作りを目指すので、開発が進んでいる平地の土地ほどその現象は顕著に起こる。そういったところでは、電車に乗って別の駅で降りても、街の違いがあまりわからない。
この地方では大きなビル群はそう見られず、駅を中心とした街作りという傾向も強くない。代わりに迫力ある海・山・川が眼前に迫り、それに従うように住宅があり、田畑がある。開発された部分も多いが、まだその色がしっかりと残っている方だと思う。
戦後すぐの日本は画一こそが正道であったかもしれないが、物も金も情報も充足しているこれからの時代は多様性、より色の濃い地域性による地方からの復興こそが国力になるのではないか。熊野はその筆頭となる潜在力を秘めている。
【稜】