早く、多く稼ぐ。工業化と資本主義がもたらした効率を重視する考え方が現代には深く根付いている。しかし効率化と共に進んだのは、個々人の孤立化ではないか。脱却の鍵を握るのは助け合い与え合える人間関係と考える。
就職してお金を稼いで消費する、という一連の活動はある種「遠回り」だとする人がいる。すなわち、われわれはお金ではなく何か物やサービスが欲しいだけであって、その欲しい物を手に入れる手段としてはお金で買うよりも、人からもらったり借りたりする方が人間関係の形成にもつながり、その物の使い方を教えてもらったり、ごみも出なかったりとより近道だというのである。人間関係が苦手な人はお金を稼げばよい。
私などはお金があれば思った時にすぐに買えるし、人と対話する手間や時間も必要ないから楽であるように思うが、しかしそれでは一生、消費者という呪縛からは逃れられない気もする。ただし、江戸時代のようなムラ社会に戻ることも理想ではない。これからは、個の自立性と相互扶助のバランスのとれた新たな「マチ社会」の形成が必要ではないか。
【稜】