年末港市に向かおうと尾鷲トンネルを抜けると、見慣れたはずの景色に薄く雪化粧が施されていて、ところどころ白く染まる馬越峠や銚子川が美しかった。スリップしないように速度を落としつつ、川端康成の『雪国』の冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の一節を思い返した。
雪は詩や歌で用いられることも多いが、新潟の豪雪で停電や立ち往生の様子を見て、除雪作業中に死傷者が出ていることを聞くと、現実として恐ろしい災害なのだと実感する。豪雪地帯で雪への備えは十分しているはずなのに、それでも自然の脅威は人間の想像や準備を超えてくる。雪や寒さの被害は温暖な本紙地域でも例外ではなく、スリップ事故や水道管凍結が発生している
いつも以上にスピードに注意しながら到着した長島港では、開場早々シャケの詰め放題の熱気が寒さを吹き飛ばしていた。今年は七輪の貸し出しや目玉のマグロ解体ショーも復活する。年末港市の実行委員長は「地元の業者で一致団結し、感染症対策に取り組みながら紀北町のおいしいものを売り出したい」と意気込んでいる。年末の長島港は今年も熱い。
(R)