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紀南抄「暑い夏の記憶」

 少し前に、日本航空123便墜落現場から、機内に設置されていた酸素マスクが発見されたというニュースがあった。台風で崩れた斜面の復旧工事中に見つかったという。37年の時を経て現代に現れることで、事故を風化させず教訓として語り継いでいかなくてはいけないというメッセージのような気がした。

 以前に「クライマーズ・ハイ」という日航機事故を題材にした小説を読んだ。登山時に興奮状態が極限まで達し、恐怖感がマヒしてしまう「クライマーズ・ハイ」と同じような状態になった架空の地方新聞社を舞台に、未曽有の大事故を取材する新聞記者とそれを取りまとめるデスクの奮闘を描いた作品。映画も見たが、リアリティのある緊迫した雰囲気や臨場感が画面からひしひしと伝わり、想像を絶するあの夏の悲惨な状況をほんの少し垣間見ることができた。

 原爆の日が過ぎ、間もなく終戦記念日を迎える。77年前もきっとうだるような暑さだっただろう。つらい記憶と暑さがリンクして、夏が来ると悲しくなるという人もいると思う。今年も大地を焦がすような灼熱の日が続いている。

【織】

      8月10日の記事

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