春が来て、花真っ盛りである。新宮市でも保健センター隣のタウンガーデンではボランティアにより色とりどりの花が生き生きと咲いている。

　私はそこまで花に頓着はないが、好きな花がある。よく山に登っていた思春期にシャクナゲとの縁ができた。

　小学３年生の時、北海道ニセコ町の山をたしか７つほど縦走（連続して登頂すること）した。２泊３日で朝から夕刻までヘトヘトになりながら歩いたが、その時に唯一時間的に登り切ることができなかった山があり、悔しさから非常に印象に残っている。それが「シャクナゲ岳」だった。

　また中学校に入る前の春休み、子ども用の登山のプログラムでネパールに行った。高い山にアタックするわけではなく、標高三千～四千メートルほどの集落を転々と歩く旅だったが、その時もずっとシャクナゲが咲いていた。当時はあんまり何回も咲いているため「もういいよ」と飽きていたが、今は好きな花になった。

　花が季節と人を結びつける。「今年もこの花の季節が来たな」と思うと、その背後にある物語が立ち上がる。シャクナゲが熊野にも咲くという単純な事実が、なんとなくうれしかった。

【稜】