官民を問わず、施策や事業の説明を聞いていて、細かい工夫や心配りに感心することが多い。もちろんグランドデザインは首長や経営者、管理職が責任を持って決めるものだが、細部にこそ担当者の資質や熱意が見える。
紀北町は運転免許証を自主返納した高齢者に、有償交通サービス「えがお」の無料券を配布する取り組みを始めた。企画課が「えがお」のPRにと提案し、免許証の自主返納の検討を促す危機管理課が受け入れたもので、対象者は限定されるものの、高齢化が進む地域の問題解決に寄与する一石二鳥の施策だと思う。無料分についても担当者は「初乗りの往復3回分」と表現しており、複数回利用してサービスを実感してもらおうという意図が分かりやすい。
「神は細部に宿る」との格言の通り、すばらしい工夫やこだわりは一見では分かりにくく、評価されないことがある。特に、行政施策は、利益を出して金銭的に報われるようなことはなく、結果が数字として明確に表れるような機会も限られる。だが、細やかな工夫の積み重ねが住民の幸福、ひいては住みやすいまちづくりにつながっていく。知恵を絞り、工夫を凝らしてほしい。
(R)