全国各地を回っている聖火リレーが三重県を通っていった。コロナ禍の中で盛大に、とはいかなかったものの、馬越峠の石畳を聖火が通る光景は美しく、ランナーの皆さんがいい笑顔だったことが印象深い。
愛知県半田市での聖火リレーが議論を呼んだ。女人禁制の「ちんとろ舟」のコースがあったが、男女平等の五輪の精神に反するとの指摘を受けて急きょ女性も乗船することにした。自分の出身地に近いため、祭りに愛着を持つ旧友もいて、今回の変更への不満の声を耳にした。
聖火リレーはあくまでイベントであり、祭りの内容に影響するものではない。それでも、議論を呼んだ背景には、伝統文化とジェンダー平等のバランスの難しさがある。社会の変容によって文化が変わっていくのは自然なことではあるが、安易に迎合してはならない部分も当然存在する。
地域の祭りや風習を見て、伝統文化の美しさは機能美ではないかと思っている。所作一つとっても長い年月をかけた積み重ねがあり、先人の営みを感じることができる。伝統文化は地域のものであり、もし変革が必要であるのなら、住民の手でゆっくりと変わっていくものではないか。
(R)