マメ科の一年草、エビスグサの種の収穫が尾鷲市賀田町であった。北アメリカ原産で、日本には享保年間に中国から渡来したといわれており、天日干ししていった種は、一般的に「ハブ茶」と呼ばれている。
その種は5ミリほど。どこかで見たような気がするので、母に聞いたら、自宅にも何年か前にとった種があった。育てているわけではなく、自然と毎年生えてくるという。
熊本大学薬学部のデータベースによると、ハブ茶は緩やかな下剤作用、強壮作用などがあり、便秘、腹部膨満感、高血圧、夜盲症、目のかすみ、目の充血や痛み、視力障害などのほか、高血圧、動脈硬化症、酒の飲み過ぎなどにも用いるとある。
一例だが、通信販売を見ると、原材料がインド産で1キロ1496円、同じくインド産で500グラム1900円、中国産で50グラム648円、ティーバッグに入った国産30袋(60グラム)で1296円など、価格も種類もさまざま。
自然の生えるものを活用した地域おこしで有名な徳島県上勝町。モミジやササ、ナンテンなど、里山の葉や花を収穫し、料理の「つまもの」として出荷する〝葉っぱビジネス〟。活性化の成功例として取り上げられ、お年寄りがいきいきと働いている。コロナ禍で売り上げは一時期前年比3割まで落ち込んだが、高級弁当や仕出しへの活用提案など、あの手この手で活路を見出し、危機を脱しつつあるという。
葉の出荷と異なり、お茶は生産する設備や許可が必要だろうし、どれだけ売り上げがあるかわからないが、シカの食害にも遭わないといわれるエビスグサ。賀田地区では「まめ茶」として伝わる飲み物とされ、その習慣が消えつつあることから、コミュニティーセンターは6年前から伝統文化の伝承として栽培などに取り組んでいる。
葉っぱビジネスのように大量出荷や劇的な地域おこしは難しいかもしれないが、当地方の釜炒り茶とのブレンドなど、付加価値を付けるのも一つ。健康志向の昨今、〝国産、無農薬〟などとうたえる。使えば資源、放っておけば雑草。文化の伝承を含め、仕掛け方次第ではお年寄りがいきいきと生活できるきっかけになるのではないか。