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紀南抄「質素の哲学」

 「世界一貧しい大統領」で知られる南米ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ上院議員が、政界からの引退を表明し、世界へ発信された。「議員の仕事は人と話し、どこへでも足を運ぶことだ」とし、それができなくなったことが理由と述べた。

 2012年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連の「持続可能な開発会議」が実施された。188か国の首脳と閣僚級など約3万人が参加し、自然と調和した人間社会の発展や貧困問題が話し合われた。
 
 同会議で最後に登壇し語り始めた小国の大統領がいた。ノーネクタイのシャツにジャケットというラフな出立ち、国連演説らしからぬ語り口…聴衆は、最初関心を示さなかったが、次第に彼の熱弁に引き込まれる。
 
 「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」などと8分間のスピーチが終わると、静まり返っていた会場が沸き返った。ムヒカのスピーチは”もっとも衝撃的なスピーチ”と呼ばれた。
 
 日本語には「足ることを知る」という言葉がある。質素の哲学を問い直したい。
 
【茂】
 

      10月22日の記事

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