新宮市であれば「広報新宮」、紀宝町であれば「広報きほう」というように毎月1回、各家庭に届く自治体の広報紙。住民に知らせるべき情報やまちの話題を中心に掲載している。各自治体の広報担当職員が取材と紙面レイアウト(製作)を行い、業者に印刷を発注。自治体によっては製作部分から外注しているところもある。近年はホームページに加え、フェイスブック、ツイッター、ラインなどのSNSを積極的に活用する一方、そうした情報ツールを使いこなせない住民のためにも紙媒体である広報紙がもっと存在感を示す必要がある。
それなりのコスト(税金)がかかっており、住民にとって有益なものでなくてはならない。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が、日常生活に大きな影響を与えた。国からの10万円の給付金や自治体独自の支援策、さらに事業者向けにも国、県、市町村それぞれの支援策があり、住民らは情報入手の段階から混乱した。申請方法などは文字で記すよりも図解の方が分かりやすく、それを掲載するためにはそれなりのスペースが必要だが、各自治体の広報紙は十分に役割を果たせただろうか。全国を見ると、「コロナ臨時号」を発行したところもあった。
コロナ禍で生まれた新たな生活様式のように、時代に応じた変化はどの分野でも必要だろう。新聞業界を見てもカラー化や文字の大きさなど視覚的な部分で改良を重ねてきた。デジタル化は避けて通れないものではあるが、紙媒体の充実がなければデジタルも生きない。広報紙にも同じことが言えるのではないか。
本紙エリアの多くの広報紙がコート紙(光沢のある白紙)を採用しているが、限られた予算の中で、表や図解、写真やイラストを多用して内容を充実させるのであれば、紙質にこだわらず、わら半紙(新聞用紙)に変えてページを増やすことを考えてもいいのでは。神戸市の広報紙はわら半紙のタブロイドサイズ(新聞の半分)で、カテゴリー別にわかりやすく編集、スペースが広い分、余白もうまく使ったレイアウトのため見やすい印象を受ける。
併せて、編集部分の改良。例えば予算の説明の中で、いわゆる行政用語を多用してもわかりにくい。図解や表に加え、注釈や解説を添えてもらいたい。さらに大切なのは住民にニーズを捉えた情報の掲載に努めること。各庁舎に目安箱を置いて住民の声を聞いてはどうか。弊紙でも時流や読者のニーズを意識した新聞発行を常に心掛けていきたい。