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社説「『秋台風』へ 油断は禁物」

 紀伊半島大水害(2011年)から9年が経過した。今年はコロナ禍のため、各地の慰霊行事も縮小傾向だったが、あの未曾有の災害を決して忘れてはならず、後世に教訓として伝えていくことが大切だ。

 先日の台風10号は九州を中心に死者や行方不明者が出たほか、建物の被害や停電も相次いだ。気象庁は台風接近前から何度も会見し、過去最強クラスの勢力であることを伝え、最大級の警戒を呼び掛けた。これまで何度も台風を経験している九州の人たちも「初めて真剣に備えた」との声があったと報道されていた。
 
 昨年9月の台風15号では、関東地方に上陸したものとしては史上最強クラスの勢力で、千葉県を中心に甚大な被害を出した。同年10月の台風19号も関東・甲信・東北地方の広範囲で記録的な大雨となり、激甚災害が適用された。
 
 台風シーズンはまだ続く。9月下旬にかけても日本の南の海面水温は平年よりかなり高い予想で、台風が発達しやすいうえに、勢力を維持して北上しやすい状況が続くと考えられる。また、これまで太平洋高気圧に阻まれていた進路も、高気圧の弱まりとともに、四国や本州直撃のいわゆる「秋台風」のコースをたどる可能性が高い。当地方では、昨年から今年にかけて、台風による大きな被害は出ていないが油断は禁物だ。
 
 今年は新型コロナ感染症防止対策が各避難所で講じられているが、今回の台風10号では避難所が定員いっぱいで入場制限の張り紙をするケースもあったようだ。新宮市では、避難所の定員を減らしても、最近の災害時の避難実績から対応できるとしている。しかし、今回のように気象庁が早めの避難行動を呼び掛けることで人々の意識は高くなる。これまでの想定が当てはまらないことも考えられ、コロナ禍での避難所の定員を事前に公表し、あふれた場合は行政が責任をもって対応するということを伝えるべきではないか。
 
 新宮市と那智勝浦町では、災害時の避難で宿泊施設を利用した場合に補助する制度を本年度初めて設けた。こうした制度についても、繰り返し周知していく必要がある。一方の住民には、災害時を想定し避難場所や方法について今一度確認してもらいたい。
 

      9月11日の記事

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