日本鯨類研究所と共催
太地町立くじらの博物館(太地町太地)で9日から、同館と(一財)日本鯨類研究所(東京都)の初の共催企画展「鯨と人の営み展」が始まった。来年3月17日(日)まで3期に分けてテーマを変えながら展示。クジラの素材やモチーフを用いた工芸品、郷土玩具などの展示で、クジラと人が営んできた歴史の一部を希少な資料を通して紹介する。
日本鯨類研究所は、頭数調査などによる鯨類の資源管理を行う機関。クジラと人のこれまでとこれからの密接な関係への理解促進を目的として、2021年から北海道から沖縄県まで、捕鯨に関係する8か所で企画展やワークショップなどを行ってきた。今回はその一環として、太地町が建設を進める「(仮称)国際鯨類施設」に同研究所の太地事務所が入ることも踏まえ、博物館と資料を出し合って展示を行うこととなった。
第1期(8月9日~11月12日)はクジラのひげ製品の展示、第2期(11月16日~令和6年2月18日)はクジラの歯・骨・革・郷土玩具などの展示、第3期(2月22日~3月17日)は1~2期の「ベストセレクション」。
第1期は、クジラのひげから作られた土産物の細工品や装身具、日用品、芸術作品など約100点が並ぶ。中でも博物館所蔵の弓矢「李満弓(りまんきゅう)」は初公開。江戸時代の紀州藩の兵法家・林李満が考案したとされる携帯用・非常用の比較的短い弓で、弓の持ち手全体と箙(えびら)と呼ばれる弓矢のケースにセミクジラのひげが使用されおり、素材のしなりが効果的に用いられていたと考えられる。
また、当初博物館内の売店で販売する工芸品として作られた「鯨髭製印籠(くじらひげせいいんろう)」は、本体・緒締め・根付の全てに4種の大型鯨類のひげや歯を用いて制作され、表面にはクジラや捕鯨の様子が手描きされた逸品。2つは研究所、1つは博物館所蔵。
日本鯨類研究所の久場朋子広報室長は「クジラと人の関わりがここ30年、『捕鯨モラトリアム』もありかなり薄くなった。これからも日本人はクジラと深い関わりを持っていくことを知ってもらう一つのきっかけになれば。太地町というクジラ文化のシンボルの場所でできたのはうれしい」と話した。
くじらの博物館の中江環副館長は「これだけのくじら製品が土産や置物だけでなく日用品にもあることから、クジラと人は密接で距離が近かった時代があるということを知ってもらえたら。非常に美しい物でもあるので、クジラの品の持つ魅力やこれからの付き合い方にも思いをはせてもらえたら」とした。
なお、今年8月の完成を目指していた「(仮称)国際鯨類施設」は工期が延長する見通しで、現在は年内に建物完成、来年4月に供用開始を予定。施設内の半分には日本鯨類研究所太地事務所が、もう半分は研修ホールやくじらに関する図書室などが入る。
▼イベント情報
- 第1期 クジラのひげ製品の展示
【期間】8月9日~11月12日) - 第2期 クジラの歯・骨・革・郷土玩具などの展示
【期間】11月16日~令和6年2月18日 - 第3期 1~2期の「ベストセレクション」
【期間】2月22日~3月17日 - 場所
太地町立くじらの博物館(太地町太地)