田辺市本宮町の熊野本宮大社で11日、新年への願いを込めた毎年恒例の一文字揮ごうがあり、九鬼家隆宮司が大筆を用いて「思」(おもい)の字を力強く書き上げた。
平成21年に始まり、今年で17回目。「来年はこのような年になってほしい」との思いを込めて冬の寒さの中、宮司が気合を込め一心に筆を振るう。
参拝者や報道陣が見守る中、白い衣にたすき掛け姿の九鬼宮司が登場。本殿に向かって礼をした。その後、長さ1.3メートル、重さ約2キロの大筆を手にして、集中を高め、筆にしっかりと墨を付けてから、3メートル四方の布に筆を走らせ、「思」の字を一気に書き切った。
最後に「令和七年乙巳(きのとみ)」と書き添え、大社の印を押して完成させると、参拝者からは拍手が起こった。
揮ごうを終えた九鬼宮司は「それぞれ大事な人がいる。人が人を思う優しさ。それが全世界で言えば平和につながる。国を思えば、災害があれば『早く良くなってほしい』という思いが大事な年になる」と話した。
「思」の字の「田」には働くという意味があるという。それに「心」が加わることから「『こうしてあげたら喜んでくれるんじゃないか』と相手に思いを寄せることが大事。人が生きる中での心の大切さを改めて大きく書こうと思って揮ごうした。とにかく平穏であるように」と願いを込めた。
前日までは違う字を予定していたという。しかし、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞授賞式(ノルウェー・オスロ)の報道を見て、改めて国が違っても相手を思うことが大事だと感じ、この字にしたことを明かした。
揮ごうした字は、この日から来年1月10日まで授与所前に掲げ、その後は社務所前に飾る予定。