熊野市紀和町、丸山千枚田の虫おくり実行委員会はこのほど、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、伝統行事「丸山千枚田の虫おくり」を中止することを決定した。中止は昨年に引き続き2年連続。
「虫おくり」は、現在の稲作での害虫駆除にあたるもので、昭和28年まで実際に丸山地区で行われていた。昔は農薬などもなく害虫になすすべがなかったことから、地域の子どもが集まってお寺からお札をもらい、松明(たいまつ)と太鼓、鐘などを手に持って千枚田の中を練(ね)り歩き、火と音で害虫を追い払っていた。この行事には、一粒でも多くの米を収穫したいという素朴な農民の祈りが込められているという。現在では、熊野古道が世界遺産に認定された2004年から農耕行事として復活し、夕刻には千枚田に松明がともされ幻想的な風景になる。夜になると太鼓や松明を持って千枚田のあぜを練り歩く。
コロナ禍にあっても開催に向けてさまざまな実施方法の検討を重ねてきたが、来場者の健康と安全を最優先に考えた結果、中止せざるを得ないとの結論に至ったとのこと。同実行委員会によると、楽しみにしていた人に向けて「大変申し訳ありませんが、ご理解の程よろしくお願いします」とした上で、「来年(6月上旬)は開催できると思いますので、皆さまのお越しをお待ちしております」と伝えている。