紀宝町などの米農家
柔らかくて味が染み込みやすく、煮崩れしにくい「おでん大根」(品種名=YR味づくり)の収穫が紀宝町で始まっている。水稲の裏作として栽培されているもので、大里の水田では11日、井賀淳也さん(40)らが初収穫を行った。長さ30センチほどの太く育ったダイコンは上々の出来で、新宮中央青果やJA伊勢ファーマーズマーケット「ほほえみかん」で販売される。
近年の米価の低迷などを背景にJA伊勢では、年間を通して水田を活用することで水稲生産者の経営安定化を図ろうと、稲作後のおでん大根栽培を推進している。高齢化による野菜の生産者が減少する中で、少しでも地域の課題を解消するとともに、地域を産地化していくねらいもある。
栽培は2年目で、昨年は井賀さんが10アールで試験栽培を行った。病害虫の被害などがあり期待通りの収穫ができなかったため、今年はJAの指導と支援を受けて土壌や排水などを改良。9月末にまいた種は順調に生育し、この日の収穫を迎えた。井賀さんと青年就農給付金事業で研修中の松下秀志さん(42)、JA関係者らが約200本を畑から丁寧に引き抜いた。
井賀さんは「昨年は不良品が多かったが、反省を生かして今年は質の良いものができて安心している。甘くて柔らかく、繊維質も少ないので、今からの寒い時期にぜひ煮込み料理で味わってほしい」とコメント。来年1月半ばまでに、4000本の収穫を目指すという。
JA伊勢三重南紀経済センター営農企画指導グループの山本政美グループ長によると、おでん大根は今年、紀宝・御浜町の生産者5軒、約30アールで栽培している。生産者向けの説明会の開催や、種子・苗代の半額助成などを行って作付面積の拡大を図った。
山本グループ長は「畑地と違うので難しい部分もあるが、土壌改良の効果があったようで良かった。今後さらに栽培技術を高め、栽培農家を増やしていきたい。主要作物である米と、裏作のおでん大根の両輪で生産者の所得向上につなげたい」と期待を込めて話していた。
またJA共済地域・農業活性化促進助成金を活用して洗浄機を購入しており、生産者に無料で貸し出すことで、労力軽減と作業性の効率向上に努めている。