新宮市伊佐田町で10月7日(水)にリニューアルオープンする市立佐藤春夫記念館(楠本秀一館長)の内部が17日、報道陣に公開された。新宮を代表する文豪が愛した、東京都文京区にあった自宅(旧佐藤邸)の一部を再現。「大正ロマン」を感じられる施設に生まれ変わった。
旧館は1989(平成元)年、新宮市新宮の速玉大社に旧佐藤邸を移築する形で開館した。老朽化のため2024(令和6)年から休館とし、総事業費約3億7000万円をかけて新館を建設した。新館の敷地面積は約1033平方メートル、延床面積約296平方メートルの2階建て。春夫が幼少期を過ごし、小説や詩など自身の作品に何度も登場させた新宮城跡近くに完成した。バリアフリー化にも取り組み、手すりやスロープ、車いすでも利用できる「みんなのトイレ」を設置した。
春夫は建築へのこだわりも強く、佐藤邸の特徴である三角形の屋根や洋風の手すりなどは自らがデザインした。新館では資料をもとにこれらを再現。門弟たちと語り合った和室や、執筆スペースとして好んだ八角塔などの復元にも取り組んだ。夏目漱石の代表作『吾輩ハ猫デアル』の挿絵を描いた中村不折の書や、春夫が運動のため愛用した自転車なども置く。
旧館で保管していた資料は燻蒸(くんじょう)した上で、2階学習室で再度展示する。春夫が遺した手記や、親友だった画家をテーマにした『小説 高村光太郎』の草稿など、貴重なものを詳細な説明パネルとともに閲覧できる。オープン後は、春夫の作品や関連書籍も販売する。
楠本館長は「伊佐田町に春夫が“里帰り”した。『頼んだぞ』と言われているようだ。後世にその名を伝える務めを果たしたい」と意欲を示した。
オープンは10月7日午後1時。入館料は一般330円、小・中学生160円だが、同12日(月・祝)まで無料とする。12月10日(木)までの特別展示として、光太郎が描いた『佐藤春夫像』などを学習室で公開する。開館時間は午前9時から午後5時(最終入館は午後4時30分)まで。休館日は月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、年末年始(12月28日~1月3日)。
■「三館共通券」も発売
新宮市は広く来場を呼び掛けるとともに、同館、旧西村家住宅、市立歴史民俗資料館の入館券がセットになった「共通券」の発売準備を進めていると明らかにした。共通券は1枚あたり一般440円、小・中学生220円の価格で調整しているという。
【佐藤春夫略歴】
1892(明治25)年4月9日、旧新宮町の医師の家庭に生まれる。新宮中学校(現・和歌山県立新宮高校)時代から執筆活動を始め、上京後は小説、短歌、膨大な量の評論などを遺した。文壇で地位を築き、戦後は芥川賞の選考委員を務めたほか、『新宮市歌』の作詞を担当。1964(昭和39)年5月6日、ラジオ番組を録音中に心筋梗塞で死去。新宮市名誉市民。同じく名誉市民で、戦後生まれ初の芥川賞作家となった中上健次にも影響を与えた。代表作に『田園の憂鬱(ゆううつ)』『わんぱく時代』など。
