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社説「有事は陸路寸断 海路の点検急げ」

 防災月間は、自治体の備えが実際に機能するのかを問い直す機会である。災害は想定しているだけでは防げない。平時のうちに何を整え、どこまで実動体制を築いているかが、大切になる。

 紀宝町は先月、災害時の上空からの情報収集、道路や河川、建物、土砂災害箇所など被災状況の確認、行方不明者の捜索支援、孤立集落の発生などを念頭に、物資輸送用大型ドローンを導入し、操縦技術課程を修了した町職員30人で無人航空機隊を結成した。道路が寸断されても空から物資を届ける備えを具体化した意義は大きい。同町はタイムライン(災害発生を前提にした事前行動計画)導入でも全国に先駆けており、防災を抽象論で終わらせず、行動計画と装備に落とし込んできた。危機を直視し、先手を打つ行政の姿として評価できる。
 
 一方、新宮市の備えはどうか。南海トラフ地震では、広域で道路網が損なわれ、陸路による支援が行き詰まる事態が想定される。そのとき命綱となるのは空路と海路である。今年2月、和歌山県が「広域防災拠点(物資)開設運営訓練」を新宮市で行った。能登半島地震で課題となった「半島防災」対策として、国から届く救援物資を避難所へ円滑に輸送する体制を確認するもので、陸上自衛隊ヘリコプターや水陸両用車など、空路と海路を活用した初めての実践訓練だった。海路では新宮港や三輪崎漁港が救援物資の搬入や復旧活動の拠点として重要な役割を担うはずだ。だが、その肝心の港が大地震に耐えうるのかという根本の検証が、市民に十分示されているとは言い難い。震度7の激しい揺れに対し、岸壁は機能を保てるのか。護岸は損傷を免れうるのか。被災後も船舶の接岸や荷さばきに支障は生じないのか。港湾管理者の和歌山県と連携して、耐震岸壁の整備状況や護岸補強の必要性、改修の見通しを、もっと明確に示すべきではないか。
 
 市民への公表が不十分なら、それ自体が防災上の弱点だ。使えるはずの港が使えなければ、海路を前提にした受援計画は机上の空論に終わる。客船の入港が増えるなど観光面で大きな役割を果たしているが、防災面ではどうか。平時には目立たぬインフラほど有事には重みを増す。だからこそ、港湾機能の耐震性を後回しにしてはならない。
 
 紀宝町が示したのは、危機感を具体策へ変える行政の責任といえる。新宮市もまた、備えを掛け声で済ませてはならない。港は使えるのか、護岸は持つのか、孤立への対策は足りているのか。防災月間に求められるのは安心を語ることではなく、安心の根拠を示すことである。市は新宮港と三輪崎漁港の点検結果と整備方針を明らかにし、実効ある備えを急ぐべきだ。
 

      9月18日の記事

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