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停電と断水の夏 避難生活の現実を問う 尾鷲市編(上)

 熊本地震で浮き彫りになった猛暑期の避難生活の厳しさは、南海トラフ地震による大規模な津波被害が想定される熊野灘沿岸地域でも深刻な課題となる。尾鷲市と紀北町で避難所に指定されている小中学校体育館の多くは全館空調を備えておらず、冷房はスポットクーラーが中心。エアコンを完備する避難所も停電時には冷房機能を失うため、避難者の熱中症対策が大きな課題となる。さらに断水が長期化すれば、飲料水の確保だけでなく、トイレや手洗いなど衛生環境の維持も難しくなる。南海トラフ地震が猛暑期に発生した場合、避難所の暑さ対策と断水への備えは十分なのか。尾鷲市と紀北町の現状を取材した。
 
 
冷房完備の避難所7割
高校体育館は整備工事進む

 南海トラフ地震の理論上最大クラスを想定した県の最新の試算では、尾鷲市の最大震度は震度6強(一部震度7)で、約5700人の死者が推計され、建物被害は全壊・焼失が約8500棟に上る。避難生活者の推計は未発表だが、2014年発表の旧データでは発災翌日から1週間程度が最大で、1万1000人が避難を余儀なくされると想定している。

 尾鷲市が津波災害時の収容避難所として指定しているのは計41か所で、空調設備またはエアコン完備は地区のコミュニティセンターや集会所、保育園などの29か所。この中には、状況や必要性に応じて冷房ありの教室を開放する小中学校6校が含まれる。

 学校関係の指定避難所は11校あり、冷房がない5校は使用を体育館だけに限定した尾鷲高校、東紀州くろしお学園おわせ分校、廃校の九鬼小の3校と、体育館に限定していないが廃校の三木小と三木里小。ただし尾鷲高校は昨年から空調設備工事に着手しており、2台1組のエアコンの設置を分割工事で進めている。おわせ分校はスポットクーラーと大型扇風機で対応する。

 周辺部は寺院と宗教施設の12か所を避難所にしている。このうち未確認を含め5か所は冷房が付いていない。

 
学校体育館の暑さ対策に
スポットクーラー導入拡大
 
 冷房のない学校体育館に対して市教委は、スポットクーラー(移動式エアコン)の導入を進めている。これまでに宮之上小に2台、尾鷲小に4台を設置し、本年度は尾鷲中の体育館に5台と武道場に2台を設置、賀田小にも2台を取り付けた。体育館全体を冷やすことはできないが、空調設備の全面整備には巨額の費用がかかるため、低コストで現実的な暑さ対策を優先している。今後も必要度に応じて他校への導入を進める方針だ。

 南海トラフ地震発生時には尾鷲市で大規模な停電がほぼ確実と想定されている。電柱の倒壊や津波による設備浸水により電力復旧には最低でも1週間以上かかる見込みで、停電時には非常用発電機が命綱となる。

 市は自主防災会の購入分を含め、市内の避難所や各地の防災倉庫61か所に計77台のガス発電機を備えている。これらは家庭用カセットボンベ2本で作動し、エコモードで約2時間の連続運転が可能。昨年は1台当たり12本のボンベを配布した。これとは別に、自主防災会にガソリン式発電機を配備しているが、20年ほど前のことであり、管理も各自主防災会に委ねられている。そのため、現在どの地区に稼働可能な発電機が残っているかどうかは市では把握していない。

 いずれにせよ非常用発電機で賄える電力量は限られるため、避難所ではスマホ充電や情報収集、夜間照明、熱中症対策の扇風機などに優先的に使用される見込み。消費電力の大きいスポットクーラーを発電機で稼働させるのは不可能で、燃料を節約しつつ効率的に電力を配分し、停電が解消されるまでの最低1週間は、暑さを我慢して乗り切ることが求められる。

      9月 7日の記事

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